管理組合のしくみと業務

 

 管理組合の役割のおおよそは、「団地運営のしくみ」のところで説明しましたが、つぎに『かわつる三芳野団地』での管理組合のしくみや業務の実際のようすをみてみたいと思います。

 まず、当団地には管理会社が入っていません。ふつう、団地やマンションでは管理事務所の窓口や清掃などの業務は管理会社に委託していることが多く、当団地でもはじめは、委託でスタートしました。しかし、それでは管理会社の就業時間しか事務所の窓口がひらかず、土・日曜には相談も手続きもできないなどの不都合が問題になりました。また委託費用も馬鹿になりません。そこで土・日曜も窓口をひらくとともに、事務局員や環境整備員もこの団地の居住者から採用することにしました。この結果、居住者の就労の機会もふえ、仕事の内容でみれば、費用も大幅に削減されることとなりました。このやり方を自主管理方式といい、昭和59(84)年4月から完全にこの方式で運営してきました。

 管理組合の組織図を図2にしめしました。これをもとに、これからしくみと業務の内容について概略をみていきましょう。

                                                  

(1)団地管理組合法人

 この団地の管理組合の正式名称は、『かわつる三芳野団地管理組合法人』といいます。単なる任意団体でなく、法人になっているのは、正式に登記することによって対外的に権利義務関係が明確になること、そのため不動産を所有したり、修繕のための借入金をしたりするさいに管理組合としての手続きができることをはじめ、多くの利点があるからです。なお、税制面では法人と非法人の管理組合とのあいだで違いはありません。この団地では、区分所有法で法人化が可能になった昭和59(84)年に、さっそく法人化をおこないました。

 

(2)規約、協定、細則などについて

 団地生活を円滑に運営していくために、規約、協定、細則その他の規程があります。

 これらは、区分所有法とあわせて私たちの居住生活の基準となる、たいへん大事なものです。

 規約は、そのなかでも、もっとも基本となるものですから、とくによく読んでおいてください。区分所有法は一般的ですが、規約は具体的に定められているので、かりにトラブルがあって裁判ざたになったばあいでも、裁判所は規約にどう定められているかということを基準に、判断を下すことが通例になっています。

 協定は、これに該当する住戸の所有者と管理組合との間、あるいは組合員と組合員との間の約束事という形式になっていますが、区分所有法上の規約としてあつかうことになっています。規約と協定は、たいへん重要なものですから総会で全組合員(および議決権)の4分の3以上の賛成がなければ、制定したり、改正したりしたりできないことになっています。

 細則は、修繕費積立金の徴収区分や日常的な共有施設の使い方などを定めたものです。これは、総会で全組合員(および議決権)の過半数の賛成で改廃ができます。

 そのほかに、より細かい規程として、「規則」、「心得」、「内規」などの名称がついてものがあります。これらは、規約や細則にもとづいて理事会で決定しています。管理組合の仕事は、こうした基準にしたがって行われますからみなさんも、かならず目をとおしておいていただいて、快適な団地生活のために、おたがいよくまもっていきたいものです。

 

 (3)総会

 総会は、548戸の全組合員があつまる、団地管理組合の最高の決定機関です。年に一度、理事会から前年度の業務報告や決算報告をうけたり、当年度の方針や具体的業務、予算と役員を決める通常総会と、緊急に重要なことを決める臨時総会とがあります。

 年一回の総会(集会)とそこでの業務報告は、区分所有法でも規定のある重要な行事です。私たちの団地では、通常総会は5月の最終日曜日に川鶴公民館で行うのが最近では通例になっており、自治会の総会もこれにあわせてひらいています。この団地では、通常総会は形式に終わらず、直接民主主義にもとづく実質的な審議の場にしようと、毎年、百数十人の実出席者があり、活発な討議が行われています。今後とも、こういう良い伝統がつづくように期待しています。

 

 (4)理事会

 総会で選ばれた10〜14人の理事により、理事会を構成します。

 理事会は、総会で決められた管理組合の方針にしたがって、日常の管理組合業務にあたります。もちろん理事になった人の多くは、他に仕事をもっていますから、土・日曜や夜など仕事以外の時間をつかって組合の業務をおこなうことになります。

 理事会は、互選で理事長1名、副理事長若干名をえらぶほか、条件があれば常任理事をえらぶこともできます。理事長は法人の代表者となります。常任理事は管理組合の常勤者となって、通常、事務局長を兼任します。

 理事は、総務・渉外、修繕(総括、長期計画、日常)、植栽管理(植栽、環境整備)、施設管理(テニスコート、駐車場・駐輪場)、会計・財務、広報(タウンニュース、CATV)、自治会などの担当業務を決定して、それぞれ分担して、業務に責任をもってあたっています。

 理事の任期は、通常総会からつぎの通常総会までの約1年間ですが、1年ですと業務になれてきたところで交代となりますので、再選も認められており、すくなくても2年はやっていただくのがのぞましいという建前で、さらに何年かつづけている人もおります。

 理事会は、月1回、原則として第1日曜日の午後にひらいており、これには総会で選ばれた監事も出席し、発言できることになっています。

 なお、これらの役員は、常勤者をのぞいてすべてボランティアで、報酬はまったくありません。

 

(5)街区班

 管理組合や自治会の業務を円滑に推進し、いっそう住みよい住宅環境をつくりあげることをめざして、中層は棟ごと(35戸以上のところは2つに分割)、タウンハウスは数棟をあわせ、その居住者によって街区班を構成しています。

「管理組合員で」とせずに、居住者で構成するとしているところに注目していただきたいのですが、これは、管理組合員でない居住者の方にも、団地の管理の問題に関心をもっていただき、協力をしてもらいたいという趣旨から、そうなっているのです。

 街区班という制度をつくったのは、居住者が街区ごとにあつまって相談し、その意見を管理組合に反映したり、また理事会が方針を決定するにさいして意見をのべたり、理事会から組合員・居住者への報告事項の伝達や、文書の配布を担当していただくために必要だという考えからです。

 とくに1棟の建物の共用部分は、その建物の専有部分の所有者の共有ですから、同じ号棟の人たちの関係はとくに深いわけです。万一火事があったりしてその号棟だけが特別に修理をおこなうことになると、その棟だけで相談することがどうしても必要になります。このように日常的に街区班のなかで協力関係をふかめておくことはきわめて重要です。

 街区班をとりまとめる世話人として、街区班長と副班長を街区班ごとにきめます(原則として順番制できめています)。また、街区班長、副班長は、自治会の班長、副班長も兼任することになっています。

 街区班長、副班長は、主として各組合員(自治会員)の意見や要望の反映、伝達などの仲介、取りまとめをおこなうとともに、管理組合や自治会の各種委員となって活動したり、各種行事の企画・運営を担当したり、班内の各組合員(自治会員)の行事への参加、取りまとめをおこない、管理組合や自治会の業務の一端をになうことになります。

 このため、街区班長会議は、理事会開催日と同一の日(原則として第一日曜日)の午前10時からひらかれます。

 ○ 街区班長の主な役割

  @ 街区班長会議への出席

  A 管理組合業務の実施と各種委員会への参加

  B 自治会業務の実施と各種行事要員への参加

  C 回覧板などの広報

  D 募金などの取りまとめ

  E その他管理組合、自治会業務への参加、協力

 ○ 副班長の主な役割

  @ 街区班長の補佐(街区班長の代理業務)

  A 防火・防犯委員

  B その他管理組合、自治会業務への参加、協力

 

 (6)管理事務所と環境整備業務

 管理組合員、居住者のみなさんの窓口となっているのが、管理事務所です。日常の業務処理の方針を決定するのは理事会ですが、その方針にそって毎日の仕事を処理しているのが、管理事務所にいる事務局長、事務局員です。

 事務局窓口は、国の祝日と年末年始(6日間)、盆休み(3日間)を除いて土、日をふくめて毎日、朝9時から夕方5時まで業務をおこなっています。平日は事務局長をふくめ3人勤務で、昼の時間も窓口業務をおこなっています。日曜日は2人勤務のため、原則として正午から午後1時までの間は窓口がしまります。

 窓口の業務は、管理組合にかんするすべての届け出などの手続きをはじめ、共用施設の使用申し込み、共用部分の修理などの申し込み、あるいはもろもろの問い合わせなど、管理組合と自治会の業務に関係することであれば、すべてあつかっています。

 団地内の清掃を中心とする環境整備業務は、環境整備員が担当しています。簡単な植栽の選定や消毒も一部おこなっています。勤務は、日曜・祝日が休みで、繁閑により多少の変更もありますが、通常つぎのような勤務時間となっています。

    毎週 月曜〜土曜日    午前8時半〜午後3時

    夏季 徒渉池開場期間   午前8時半〜午後3時半

 

 ほかに毎年、期間をかぎって、上記とは別に募集して団地内の「草取り」も行っています。期間は、雑草が勢いづく、5月はじめから10月中ごろまでの間、週4日間ぐらい(ただし小中学校の夏休み期間は中断)を、作業の目安ととしています。

 

 (7)管理組合の収入と支出 

 管理組合の業務をすすめていく上での財源は、みなさんの収める管理組合費と修繕費積立金が基本です。そのほかに駐車料金やテニスコート使用料、集会所使用料などがあります。

 管理組合費は、植栽や清掃の費用、日常の点検や修繕、共用部分の照明や水道の費用、管理事務所関係の費用、居住者への広報費用など日常の管理費用にあてられています。

 修繕費積立金は、長期修繕計画にもとづく計画的な修繕にあてられる費用として、大規模な修繕を実施するときに必要な費用を、多額の一時金を徴収することのないよう、つねに計画的に積み立てをおこなっているものです。当団地では早くから長期修繕計画を作成して積み立てをおこなってきたために、これまでの工事には、積立金の取り崩しで余裕をもって対応することができております。

 積立金は、細則にしたがって、建物の建築方式などで7区分に区分して積立金の金額を決めており、支出についても区分ごとに分けて管理しています。修繕につかわれた費用は団地がはじまったときの分にさかのぼって、現在の区分で特定できるものは区分して処理しており、区分ごとに適正な費用が計上されています。また、駐車料など共用部分から発生する収入や、集会所やテニスコートの修理など全住戸による共用部分の支出は、それぞれ各区分に公平に按分して処理していることはいうまでもありません。