団地運営のしくみ

 

 私たちは、みなこの団地の住戸の所有者になったとたんに、自動的に管理組合の一員となりました。これは、日本人の子どもに生まれたら、生れながらにして日本人であるのと同じで、イヤだというわけにはいきません。団地というのは、そういう共同生活をはじめから予定したところですから、みなで力をあわせて、それにふさわしい『よい団地』『よいコミュニティ』をつくっていきたいものです。

 こうした団地運営の基本は、区分所有法という法律(建物の区分所有に関する法律)で決められており、住戸の所有者を区分所有者とよんでいます。

 住戸の扉や窓からなかや壁の内側は個人の所有で、「専有部分」というよび方をしています。しかし、扉の外側や窓枠もふくめて建物のその他の部分は全部それぞれの棟の住戸の持ち主の共有です。また、団地の土地や受水槽・ポンプ室、高架水槽、管理事務所、集会所と樹木、芝生、テニスコート、子どもの遊び場(プレイロット)などの施設はこの団地の住宅所有者全体の共有で、いずれも「共用部分」とよばれています。

 団地の運営は、所有者全員でつくっている管理組合をつうじておこなうことになります。その目的は主として共用部分の維持、管理ですが、専有部分の使い方であっても、他の住民に影響のある行為はたくさんありますから、それについても管理組合が一定の制約をすることができることになっています。

 

 それでは具体的に管理の内容はなにかをみてみましょう。

 あなたが団地ではなくて一戸建に住んでいるとすれば、家屋や庭の維持のためにどうするでしょう。台風で屋根瓦がとべば、職人さんにきてもらって修理する。一年に何回かは庭の植木も職人の人にきてもらって作業をしてもらう。壁にひびが入れば、業者を呼んで補修をしてもらう。それらは全部、家族のだれかが業者を依頼したり、値段の話をしたり、支払いをしたりするでしょう。また、突発的な修理や将来のリフォーム、あるいは建て替えが必要になるときのために、毎月いくらかは貯金もする。こういうことが、ごく自然に行なわれているでしょう。こういうことのために、毎日毎日すこしずつは、あるいはときどきは集中していろいろ頭を悩ますことになる、というのが普通の例でしょう。

 団地の管理というのは、一戸建ならば自分で業者と契約してするこういうような仕事を、団地のばあいは、共同で管理する人(管理者)をきめて、管理者をつうじて人を雇ったり、管理業者と契約して仕事をしてもらうことになります。

 なんといっても、団地では管理の中心的目的は、団地の建物の共用部分あるいは敷地、付属施設といったものの価値をどう低下させずに維持するか、ということが基本です。ですから、そういう資産としての団地のねうちを維持する仕事が管理の第一の目的です。

 具体的に管理とはなにかといえば、建物の日常的な維持としての点検や修理作業がまずあります。また、長期的には建物の価値を保全するために、外壁の全面補修、屋根やベランダの防水の取り替え、給排水管の更生や更新があり、敷地や付属施設でいえば、駐車場やテニスコート、プレイロットなどの設備の点検や更新などがあります。

 もちろん、建物や付属施設の価値を維持するといっても、時代の変化や技術の発展、居住者の新たな要求などがありますから、単純に今までと同じ状態を保つだけというのも現実的ではありません。ですから、建物も設備も改善することもあれば、一部新規の付属施設をつくったり、設備を増設したりということも考えにいれなければなりません。

 また、こうした目的のために、建物などの長期修繕計画をたて、それにもとづく修繕費積立金をあつめ、それを安全に保全したり、共用施設に保険をかけたりしておかなければなりません。こういうことが主たる管理の仕事です。

 

◆ 日常の生活環境を維持、整備する

 建物や設備の維持だけでは、団地での快適な生活は保障されません。自分の住戸(専有部分)のなかだけでなく、住戸のまわりの生活環境を良好に保たなくては、ほんとうに住みよい環境は維持されません。

 こういった点でも一戸建てであれば、自分一人でやるか、せいぜい家族の協力をえてやる作業、たとえば家や庭の掃除、庭園灯の取り替えなどこまごました日常の仕事がかならずあります。

 団地のばあいは、こうした日常的な作業も共同してやるか、人を雇ってやるかは別として、管理組合の管理の仕事として、計画をたててやる必要があります。

 つまり団地の共用部分の清掃や電球の取り替えなどの業務、給水施設などの日常点検をはじめとする日常作業をおこなうことです。それを保障するために日常的な管理のための予算をたて、それにもとづいて管理組合費を集め、日常の支出を行うことです。

 

◆ 共同生活を安全、快適に保つ

ただ、団地生活が一戸建てとちがうところは、前後左右、上下の住戸との共同生活ですから、単に資産としての団地の価値を維持するということや、共有部分を清潔に維持するというだけではすみません。

 たがいにいろいろと生活条件も、考え方もちがった人が共同生活をいとなむ場ですから、そういう居住者全員が、相互に安全、快適に住むことができる環境でなければなりません。そこで、居室(専有部分)をもふくめた住み方のルールを定め、それにしたがって生活することがどうしても必要です。 ですから日常の生活環境が快適というのも、水道などの設備が故障なく動いているとか、廊下や庭がきれいになっているというだけでなく、居住者相互間がお互いによい関係にあるということが不可欠です。ピアノの音や部屋で跳んだりはねたりの音、ペットの問題などいろいろな面で、お互いに不快な気持ちをもつことのないような状態でなければなりません。

 そういう点でも管理組合が、専有部分での生活にかんしても、塾や生け花教室などの許可不許可、ペット飼育方法などなどについて、その基準を総会や理事会において細則などの形で決め、それにもとづいて許可や居住者相互間のトラブルの調整などをおこなうことも、管理の重要な部分をなすものです。もちろん、このばあいは住戸の所有者やその家族だけではなく、所有者から借りて(賃貸住宅として)住んでいる人も、同様に規則にしたがってもらうようになっていることも当然です。

 

こうした共同生活を快適にたもつためには、このほかにも川越市の行政(教育、環境、公共施設、ごみ処理、上下水道、高齢者などの福祉等)や近隣の地域とも深くかかわりがあります。また、交通機関(バス、鉄道)や道路の問題や防災・防犯対策なども重要です。

 さらに、建物や施設の管理というハード面だけでなく、住民相互の親睦や相互理解をすすめるために、お祭りや文化行事、スポーツ行事を運営したり、各種のサークルを援助したりするソフト面の活動を担当する組織として、かわつる三芳野自治会があります。